地理情報システム学会

会長挨拶

会長就任にあたって 山本佳世子(2024年5月24日) 

理事会において理事の皆様からご推挙いただき,また,2024年5月18日(土)に私の所属先である電気通信大学(電通大)で開催された社員総会においてご承認いただき,地理情報システム学会の会長を拝命いたしました.2020-2022年度間は,新型コロナウイルス感染症が世界規模で感染が拡大していたため,本学会の社員総会,学術大会はオンラインで開催されていました.この間,第15代会長の大佛俊泰先生,第16代会長の厳網林先生を筆頭に,理事の皆様,各委員会の委員長の皆様が,学会運営で苦慮されつつ,工夫を重ねてくださいました.また,学術大会担当理事の井上亮先生をはじめ,大会実行委員会の皆様は,オンラインやハイブリッドでの学術大会を着実に実施してくださいました.この場を借りて,ここにあげた皆様,ご協力いただいた会員の皆様に,心から感謝申し上げます.

2023年度には,新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行したため,電通大で開催された学術大会はInternational Association of Geo-informatics (IAG'i)と合同で開催されました.そのため,国内外から多くの参加者の皆様がいらっしゃり,懇親会では飲み物や食べ物を手に歓談されていました.私は,この時に会場校代表を担当させていただき,新型コロナウイルス感染症拡大前のように,約300名の参加者の皆様が学術大会を楽しんでいらっしゃる姿を拝見し,とてもうれしく思いました.近年は様々な情報通信技術の発展が著しく,人々は離れていてもインターネットを介してつながることができますが,対面でのコミュニケーションに勝るものはないと認識いたしました.

2023年度には,事務局体制に大きな変化もありました.具体的には,本学会の事務局は,文京区の学会センタービルから株式会社毎日学術フォーラムに移転し,同社の2名の社員の方々が事務局を担当してくださることになりました.同社は2006年に設立され,学会運営に関する様々な業務を代行する学会事務局を専門としています.一口に学会と言っても,規模や専門分野は多様であり,運営方法が学会ごとに大きく異なっています.本学会の事務局を担当する2名の方々は,本学会の学会運営に徐々に習熟しつつあり,うれしく思っています.また,事務局体制の移行にあたっては,第16代会長の厳網林先生,副会長(当時は事務局長)の中谷友樹先生,事務局長(当時は事務局長補佐・財務担当理事)の山田育穂先生にご尽力いただきました. 

さて,本学会は,1991年11月30日に設立し,2021年に設立30周年を迎えました.同年の学術大会の時に,記念事業の一つとして30周年記念特別シンポジウムをオンラインで開催いたしました.第4代会長の岡部篤行先生,第8代会長の村山祐司先生,当時の会長(第15代会長)の大佛俊泰先生に,ご講演をいただきました.その時に気が付いたことは,第一に,本学会がこれまでの多くの会員の皆様の様々な活動の蓄積によって成り立っており,自分達の世代でより充実させて,さらに若い世代の方々に受け継ぐ必要があるということです.第二に,各時代の学術的・社会的な必要性に対応して,会員の皆様が多様な研究をされていることです.設立当時から継続している研究,新しく始まった研究,最近ではSDGsに関連した問題の解決を目指す研究も見られます.本学会では,産官学民のダイバーシティに富んだ環境において,様々なバックグラウンドを持つ会員の皆様の多様な視点やアイディアが交わり,新しい創造的な研究が生み出されて続けているのではないかと思います.

私は,内閣府の上席科学技術政策フェローとして,第5期科学技術基本計画(2016-2020年度)の策定に関わりました.この計画には,初めて,情報通信技術の効果的な利活用を前提とした「超スマート社会」「Society 5.0」の概念が盛り込まれ,第6期科学技術・イノベーション基本計画(2021-2025年度)にも引き継がれました.これらの概念は,サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させた人間中心の社会で,持続可能性と強靭性を備え,一人ひとりが多様な幸せを実現できる社会を指しています.また,これらの概念を基盤として,デジタルツイン,スマートシティ,XR(Cross Reality / Extended Reality),メタバース,生成AIなどの技術開発・融合が進んでいます.こうした技術は,GISとの親和性が高いため,本学会の会員の皆様が新しい研究,技術開発を行う可能性が高まっているのではないでしょうか.

私は,もともと地理学(都市地理学,計量地理学)を専攻していましたが,社会工学という専門分野でGIS研究を始め,博士号を取得しました.2006年に現在の所属先に着任後は,GISを含む情報通信技術を用いた研究に従事しており,現在は情報工学が最も中心的な専門分野になります.情報通信技術は新しい技術であり,急速に進化しています.また,近年では,量子コンピュータや高速大容量通信などのハードウェアの進化も著しいです.こうした時代の到来こそ,本学会が進出できる範囲が広がり,会員の皆様がこれまで以上に活躍する機会が増えるのではないでしょうか.私も,わくわく感を忘れずに,好奇心を持って,皆様と一緒に最先端のチャレンジングな研究をしたいと思っています.

本学会には,上述のように,産官学民の様々な方々が参加してくださっています.また,最近は,若い学生会員の皆様も増えています.本学会では,こうした様々な会員の皆様が連携し,GIS研究や技術開発を進めることができる環境が既に整っています.本学会の今後のいっそうの発展に向けて一緒に進んでいきましょう.